オーネット・コールマン(as,tp,vln) 1930年アメリカ・テキサス州フォートワース生まれ
ご存知、フリージャズの開祖であり今でも現役バリバリで活躍する巨人。彼のレコーディングはリーダー作だけでも相当数にのぼり、またCD化されていない作品も多数あるので全貌を捉えるのは骨が折れるのですが、とりあえず手持のリーダー作CDを順に聴きながら彼の音楽を追いかけてみたいと思います。
まず最初期の作品としてContemporaryに2枚。
初リーダー作の(1)はキャノンボール・アダレイのBlueNote盤と同じようなタイトルだが人気は天と地の差がある。初心者が間違えてこっちを買っちゃったらえらいことだな、なんていらぬ心配をしてしまいます。内容は今聴くとけっこう普通なんだけど、きっと当時は斬新そのものだったのでしょう。既にDon CherryやBilly Higginsといった同志が参加し、Ornette独自の世界が展開されています。"The Blessing"や"The Sphinx"といった重要なナンバーをはじめ、どこか背中がむず痒くなるような、どこなく不安を感じさせるトリッキーなOrnetteのコンポジション、そして艶やかなアルトサックスの音色が堪能できます。Cherryも全体的にたどたどしくヘタウマという感じなのだが、既にOrnetteの音楽には欠かせない要素として機能しています。ピアニストにWalter Norris、ベースにRed Mitchellという保守的なプレイヤーが参加しており、これぞ世紀のミスマッチながらその分危ない展開や冒険はないのでフツーのジャズアルバムとしてもそこそこ楽しめると思います。翌年の(2)では、後の黄金カルテットと同じ編成を実践。相変わらずMichell,Sherry Mann,Percy Heathといった今では考えられないような連中とやらされているのですが、Ornetteの目指すジャズにさらに一歩近づいていることが判る力作であり"Tears Inside"、"Rejoicing"等を収録した重要作品です。この2枚はOJCなどで容易に入手できるので是非一聴して欲しいものです。
Contemporaryでは扱いきれなくなった(?)OrnetteはJohn Lewis(MJQ)などの口添えもありAtlanticと契約。
その第一弾アルバム(3)が初期の代表作とされています。メンバーはCherry,Higginsに加えオーネットの共演者の中では最重要人物の一人であろうCharlie Haden(b)が参加。黄金カルテットの完成です。そして同アルバムに収められた"Lonely Women"の不安と悲しみに満ちたグロテスクな美しさがOrneteミュージックへのイメージと評価を決定付けました。これは何度聴いても本当に奇妙な感覚にさせられる作品です。特にHadenのベースが大きな存在であることが良くわかるのです。衝撃度でいえばMilesの「Kind Of Blue」やColtraneの「Giant Steps」といった同年作品と並び賞されるべき傑作だと思っています。他にもフリーキーでアグレッシブなナンバーやOrnetteらしいトリッキーなナンバーも搭載で必聴でしょう。
(4)は"Ramblin'"を含む軽快でコンパクトなアルバム、聴き易いです。
(5)はドラマーにEd Blackwellを迎え"Embraceble You"なども取り上げてます。”これぞ我が音楽”と開き直りに近いタイトルと誇らしげなジャケットもかっこいいですね。BlackwellのドラミングはHigginsより土着的な感じです。これも元気一杯のアルバムでおすすめできます。
こうしてアルバム毎に順調にカルテットの完成度、充実度を高めていったのですが、このまますんなりいかないのがOrnette。次のはジャズ史に残る大暴挙作です。そのまんまのタイトルからしてヤバそうだけど内容も想像に違わずエグい。左右のチャンネルに別れた二組のカルテット(OrnetteチームとDolphyチーム)がバラバラに演奏しているのものを、こちらは同時に聴かなきゃいけません。適当かと思えば時々ピタッと合わせてテーマらしきものを演奏したり、と常人にはちょっと理解不能だよなあ。ダブルカルテットというよりは8人編成の大型コンボ作品として私は聴いています。よく名盤紹介本などでこれがOrnetteの代表作になっている場合も多いですけど、ビギナーにいきなりこれを聴かせちゃだめだ。他の作品を10枚くらい聴いて免疫をつけさせてからにしよう。
未CD化の(7)を挟み(8)では珍しくテナーを手にかなりバリバリとダーティに吹きまくるOrnette。Cherryのポケットトランペットも個性的です。しかし紛れもないOrnette Musicになっており、ただただカッコイイの一言です。ベースはJimmy Garrison。これも興味深い。ちなみに「Free Jazz」を除く(1)から(8)は、興味の無い人が聴いたら全部同じように聴こえる気がします。
賛否両論を浴びながらも着実にアルバムを録音してきたOrnetteでしたが、Atlanticを離れ苦闘の時代に突入します。
Cherryらと別れ、David Izenson,Charles Moffetと新軍団を結成したOrnetteですがESPに残した(9)を最後にしばらくリーダー作から遠ざかります。このアルバムでのアルトは異様なほど美しい。ホール独特のエコーのせいかも。トリオになったことでより出番の増えたOrnetteがスピーディに暴れまくる"Daughnut"も見事だが"Sadness"で聴かせる不気味な静けさが堪らないです。ストリングカルテットによるおどろおどろしい曲もありますが、後のクラシック志向の表れでしょうか。それにしても(自腹で)タウンホールでストリングス連れてコンサートやって一応観客も聴きに来てるってことはOrneteの音楽もそこそこ認知されてたんですかね。まあ、いずれにしてもダークで強力なライブ盤で大好きです。純粋なプレーヤーとしての切れ味もこの頃から65年あたりまでがピークだったのではないかと思っています。ちなみにジャケットはイラストのやつより写真バージョンのほうが暗くアングラな感じで好みです。
2年の沈黙の後、久々の吹き込みが(10)。なぜか仏コロンビアに吹き込んでます。しかも映画のサントラですと。こんなもん映画に使えるか。事実使われなかったらしいけど。延々吹きまくりのOrnettトリオにやる気のなさそうな弦&木管オケが時折絡み、唯一無二のダルな世界を産み出しています。こういうのはあれこれ分析して聴いても疲れるだけなので、80分間ひたすら音楽に身を委ねるのが良いでしょう。事実私も今現在ビールなど飲みながら適当に聴いています。アルバム全体で一曲ですから。このトリオは本当にタフでパワフルです。しかしPharoah Sandersは途中まで全然聴こえないんですけど、本当にいたのでしょうか、と思ったらPart4にそれらしい咆哮が少しだけありました。
1965年から急速に一線に復活してきたOrnette、次はイギリスに殴り込みをかけクロイドンホールでコンサートを行います。何でも当時の法律の絡みとかでOrnetteはやむなくクラシックのミュージシャンとしてコンサートを行ったそうです。で偽りのクラシックコンサートに続いて行われた正体バージョンを収めたのが(11)です。冒頭からいきなり単調で退屈な木管アンサンブル(本人不参加)がダラダラ25分も続き気持ちが萎えます。興味の無い人は飛ばして2曲目から聴くのが正解です。このアルバムではリーダー作としては初めて自身のトランペットとバイオリン(勿論ぐちゃぐちゃ)を聴かせているのがポイントです。それにしてもこの割れんばかりの歓声はすごい。Ornetteから"Cherokee"のフレーズも飛び出したりして意外に楽しそうです。