続きです。65年あたりから再び精力的に活動するようになったOrnetteはついにメインストリームジャズの殿堂、BlueNoteと契約。レコーディングを開始します。
当時BlueNoteレーベルはOrnette以外にもCecil Taylorや元相棒Don Cherryなどもレコーディングしており前衛派にも門戸を開いていたわけですが、その先駆けがOrnetteでした。(1)(2)は当時のOrnetteの充実振りを如実に物語る傑作ライブで必聴です。2枚とも聴いてください。シンプルなトリオ編成による一切の無駄を省いた切れ味鋭いプレイに圧倒されてしまいます。特にアルトオンリーで駆け抜ける(12)が良いです。"Europian Echos"などはワルツ調の楽しい曲でノーマルなジャズファンにもお勧めできます。(13)では1曲だけですが、またヴァイオリンとペットを取り出しドシャメシャやってくれてます。
翌年録音された(14)ではベースにHadenを呼び戻し、ドラムには何と当時8歳の息子、Denardoを起用。どこまで本気なのか判らないのがOrnetteらしいのですが。ここでのOrnetteは相変わらずです。3つの楽器を気侭に持ち替えてます。Hadenは無茶をする二人を無視するかのごとく、ただ黙々とベースを弾き込み、Denardoは、、、何て言えばいいのでしょう。まあ、Ornetteのアルバムだから許されるようなもんですね。8歳の演奏だと思って聴くと面白いですが、アルバムの出来としてはどうなんでしょうかね。
BlueNoteへの最終録音となったのが(15)(16)の二枚。注目はやはりGarrison&ElvinというColtraneチームの参加。Garrisonとは「On Tenor」で共演済みですがElvinとの邂逅は貴重でしょう。とはいえそれによってOrnette先生が変わるはずも無くいつも通り、いやむしろいつもより淡々としてる気も。それよりこの二枚のアルバムで妙な存在感を示しているのがアルバム上は今回が初登場となるDewey Redman。(15)の1曲目、10分過ぎDeweyのグロテスクな登場の仕方はなかなかショッキングです。酔っ払ってるのでしょうか?Elvinのドラムはさほど強烈なプレイというわけではなく、Elvinにしては普通ですがアルバムとしてはこれまでの作品に無い重みを感じるのであります。(15)の"Bloadway Blues"はカッコイイ、(16)はジャケがソウルしてます。
BlueNoteを離れた後、またも名門Implusレーベルに「Ornete At 12」「Crisis」の二枚を吹き込んでいるのですが、なぜかまだCD化されていません。何でですか。聴きたいぞ。同じImplusでもShepp,Ayler,Marion BrownなどはほとんどCDになったのに何故Ornetteだけ?
そして栄光の70年代へ。
70年代のOrnrtteといえばメジャーCBSへのレコーディングが重要なのだが、その前に1枚。ロフトとして開放した自宅3階"アーティスツハウス"で録音された(17)。ロフトジャズ黎明期の混沌が良く表れた音です。タイトル曲はコーラス入りとインストと2パターンありますが、コーラスバージョンがすごい。男女のラフなコーラスがOrnetteカルテット(Redman,Haden,Blackwell)をバックにいかにも楽しそうに乗りまくる怪演。Hadenのベースは5,60年代のプレイに比べ、ドロドロ感が強まり、Blackwellのワンアンドオンリーなドラムも小気味良い。このアルバムは他の曲も開放感に満ちた伸び伸びした演奏が楽しめる快作です。熱い演奏に対するパラパラの拍手が侘しい。
(18)よりいよいよ天下のCBSへ吹き込み開始です。Cherry,Haden,Blackwell,Higgins,Redmanといったこれまでのレギュラー総動員にに加え、女性Voやポエム、聞き慣れない名前のミュージシャンが多数登場。さすが予算が違う。タイトル曲にはBobby Bradfordの名前も。これまでの集大成ともいえるし、新しい時代への幕開けを飾るともいえる、いずれにしてもメジャーレーベルに移ってもまったく媚びることのないOrnetteらしさ爆発の名盤です。特に好きなのは冒頭を飾る女性Voをフィーチャーしたスピリチュアルな"What Reason Could I Give"です。
続く(19)は1971年〜1972年にかけて録音された未発表音源を1枚にまとめた作品。さすがにアルバムとしてのまとまりには欠けますが、それぞれの演奏のレベルは高く未発表集にありがちな散漫さは感じません。"Happy House"なんてOreneteらしさ全開のすごい演奏ですよ。また"School Wor"は後にOrnetteのテーマソング(?)ともなるあの曲です。2曲だけですがJIm Hall,Ceder Waltonとの共演もあり興味は尽きないです。なぜか日本盤CDに最初になったのは本作でした。
さてCBS時代のラストを飾るのがロンドンシンフォニーとの共演となった(20)です。CBSの潤沢な予算のもとだからこそ実現したレコーディングなのでしょう。なんとも異様な音絵巻ですがOrnetteの野心が壮大なスケールで展開する超問題大作です。この試みは成功だったのでしょうか。私には判りかねます。何度も繰り返し聴きたい作品ではないですねえ...でも好きですけど、このアルバム。この頃からOrnetteは"ハーモロディック"なる言葉を使い始めたということです。
CBSへの録音はわずか3枚で終了。というのもこの時期CBSがジャズから撤退するため、契約していたジャズメンをかなりリストラしたらしいんですね。もちろんOrnetteもその内の一人だったわけですが、一般企業でもOrneteみたいなタイプの社員はいかにも真っ先にリストラ対象になりそうですものね。で再び職を失ったOrneteが次に潜り込んだ(?)のがA&M系列のホライズンレーベルでした。
(21)はこれまでのOrnetteミュージックとは一味違った作品となっています。Bernon Nix,Charles Ellerbeeのツインギター、Jamaladeen Tacumaのベース、Ronald Shanonn Jacksonのドラムが産み出すうねるようなファンクビートに乗ってOrnetteが心行くまでひたすらソロを吹きまくっています。左右のスピーカーから聴こえてくる変態ツインギターの絡み合いがたまりません。曲はおなじみの"あの"曲です。今回は"Theme From A Symphony"という曲名になっています。15分にも及ぶヴァリエーション1が終わり、一息つくとヴァリエーション2でまた同じテーマが始まるともう恍惚としてきます。パコパコとチープな音で叩きまくるJacksonのドラムも面白いです。後のプライムタイムの原型がここに誕生しているわけです。ちなみに"Midnight Sunrise"という曲ではモロッコ・ジュジューカ市のミュージシャンと民族音楽共演、飽くなき前進意欲を更に見せつけます。名盤です。
Artists Houseからの(22)も(21)と同じメンツで録音された一枚。独特のツインギターのリフの合間から調子っ外れなOrnetteのアルトが登場する瞬間、いいですねえ。このアルバムを聴いていると例えようも無い倦怠感、脱力感に襲われます。しかし彼らの演奏は体力勝負という感じで突き進んでいきます。これはファンクなのでしょうか。"Europian Echos"のプライムタイム・バージョンも聴けます。
ハイテンションなアルバムが続く中、ちょっと一息的な作品が(23)です。Ornetteにとって最高のベーシスト、Charile Hadenとのデュオなのですが、ここには激しさや難解さはなく、楽器による二人の落ち着いた対話が聴こえてきます。Ornetteは「On Tenor」以来、久しぶりにテナーサックスを吹いていますが、高い音域ではまるっきりアルトに聴こえるのが不思議です。"Mary Hartman,Mary Hartman"がとても美しく艶やかで素晴らしい出来。ちなみに二人はHadenのリーダ作2枚でもデュオを披露しています。
充実した70年代の終わりを飾る(24)ではドラマーに息子DenardoとCalvin Wenstonを加えた新しいプライムタイムによる録音。(22)がまだ妖しさやアブストラクトさを残していたのに対し(24)ではポップで明快なファンクサウンドが炸裂。タイトなファンクビートの上を軽やかに飛翔するオーネットのアルトも好調そのもの。