DAVID SANBORN(デヴィッド・サンボーン、as)

1945年フロリダ州タンパ生まれ。幼い頃、小児マヒにかかり、その治療のためにアルト・サックスを始める。North Western大学とIowa大学で音楽を学ぶ。1967〜71年はPaul Butterfield Blues Bandで活動。その後NYに進出しStevie Wonder、Paul Simon、David Bowie、James Taylor等、大物のバックを務めた。74年にGil Evansオーケストラに参加。76年にデビュー・アルバム「Taking Off」を発表。フュージョン界のスタープレーヤーとなる。また独特の音色を活かし多くのフュージョンアルバムに参加。ロック・ポップスの一流ミュージシャンにも彼のサックス・サウンドを求める者は多い。1979年にはEagles「LONG RUN」にも参加。その後も順調にアルバムを発表。いまやワン・アンド・オンリーのフュージョンサックス奏者として君臨。故Grover Washington JRやMichael Breckerらと並び若手サックスプレイヤーの尊敬を集める存在となっている。


「TAKING OFF」 1975年

TAKING OFF

30歳という、やや遅咲きとなったデビュー作。Brecker兄弟やDon Grolnick、Steve Kahnなどニューヨーク・フュージョンシーンの大物が多数参加しているところにSanbornの偉大さが窺える。内容はいかにも当時のNYフュージョンという感じでスタイリッシュ。(1)”BUTTERFAT”の最初の吹き出しを聴いて欲しい。ちょっと拉げたようなSanbornサウンドがいきなり全開だ。ノリノリの名曲。ソロもかっこいい。(2)”ジョージアを遠く越えて”はバラードだが、Sanbornの表現力は既に完成している。アルバム後半のストリングスとの共演はミスマッチ。

「DAVID SANBORN」 1976年

TAKING OFF

「メロー・サンボーン」の邦題が示すように。ファーストのパワフルなサウンドからややメロウにシフトしたセカンド。(2)の”SMILE”で女性ボーカルを導入しているところにもそれが表われている。この曲の出来は素晴らしい。他にこれといった特長は見出せないが、よくまとまった、悪く言えば無難な作品といえよう。ただしSanborn自身のプレイは相変わらず印象的かつ個性的だ。

「PROMISE TO THE MOON」 1977年

PROMISE TO THE MOON

Sanborn Bandとしてのアルバム。注目は3曲のボーカルナンバーだ。もろAORサウンドに仕上がっており、Sanbornのソロも適材適所という印象。Sanborn自身も(3)”見知らぬ人の腕に”で歌っている(あまり上手くないけど)。アルバム全体ではHiram Bullockの大活躍が目立つ。ギタリストとしてはもちろんだが、ボーカリストとしても非凡なものを聴かせているしコンポーザーとしても2曲提供している。あとは(2)”BENJAMIN”、わずか1分の曲だがSanbornの切ないサックスが胸にしみる。これも聴きもの。

「HEART TO HEART」 1978年

HEART TO HEART

前2作はバンドとしてのサウンドを追求してるように思えたが、このアルバムでは再び大物ゲストとの共演になっている。特に(2)”SHORT VISIT”ではGil Evansオーケストラと共演。ジャジーなSanbornが聴ける名演だ。メンバーにはGeorge AdamsやArthur Blythe(!)といった意外な名前も見える。誉れ高い(2)以外も佳曲揃いで、(1)”SOLO”はメローなSanbornの流麗なプレイがよい。(4)”LOTUS BLOSSUM”は後のスタジオライブでも再演された。David Spinozzaがギターで健闘している。名作。

「HIDEAWAY」 1980年

HIDEAWAY

グラミー賞にノミネートされ知名度を一気に高めた傑作。Sanborn自身のオリジナルを6曲も収録しているのが珍しい。しかしどれも素晴らしい名曲だ。特に一人でサックスの多重録音をしているタイトル曲(1)が素晴らしい。このなんともいえない胸を締め付けられるようなメロディ。是非聴いてください。曲の配置が抜群にいいアルバムで最後までスムースに聴き通せる(曲自体が素晴らしいというのもあるけど)。ジャケットもサウンドコンセプトにぴったりで、裏ジャケも時代を感じさせる。このアルバム本当にイイです。Sanborn聴くなら最初にお勧めしたい逸品。

「VOYEUR」 1981年

VOYEUR

わずか30分弱というコンパクトな作品だが内容は濃い。全体的にブラコン色が強い。ききどころはMarcus Millerのベースが唸る(5)”RUN FOR COVER”。これがファンクな曲調でとてもかっこいい。さらには(6)”ALL I NEED IS YOU”これはバラードだが、終盤徐々に盛り上がっていくSanbornのソロに女性コーラスが絡んでいくところが筆舌に尽くし難い。そしてMarcusのピアノとのデュオ(7)”JUST FOR YOU”は、わずか2分の小曲だがラストをシッポリと決めてくれる。アルバム後半が聴きものだ。

「AS WE SPEAK」 1982年

AS WE SPEAK

リアルタイムでSanbornを聴いたのはこのアルバムあたりからだったので非常に印象深い作品。(1)”PORT OF CALL”を聴いた時の衝撃と感動が忘れられない。大袈裟だが、この世にこんなカッコイイ曲、演奏があるのか!と思った。特に3分半あたりからエンディングまでのSanbornのソロの凄さったら。Sanborn生涯のベストソロだと私は思う。他には数曲でSanbornがソプラノを吹いているが、やはり個性的な音色だ。ボーカル曲も2曲ありAOR色が強いアルバムで全体的にはオシャレでクールな印象。(1)は何百回も聴いたけど色褪せませんね。

「BACKSTREET」 1983年

BACKSTREET

後に、Sanbornと最強コンビとなるMarcus Millerが初めてプロデューサーに名を連ねた作品。個人的には地味な印象のアルバムだが内容に抜かりはない。(1)”I TOLD U SO”はユッタリとした中にも印象的なメロディ。Marcus作(3)”BELIEVER”はノリノリのファンク。スローの(4)タイトル曲、切ないバラードを歌い上げたら天下一品のSanbornにピッタリの(5)”A TEAR FOR CRYSTAL”など非常に完成度が高く、よくまとまった秀作。バックコーラスでLuther Vandross(大ファンです)などが参加。

「STRAIGHT TO THE HEART」 1984年

STRAIGHT TO THE HEART

これまでの集大成ともいえるスタジオライブアルバム。ビデオも出た。スタジオ作品に比べややラフだが、Sanbornの思い切ったソロが堪能できる。ライブでも上手い。(1)”Hideaway”などライブでどう処理するのか、不思議だったがアルト一本で十分に吹き切ってみせる。Marcusもチョッパー炸裂だ。選曲はこれまでの名曲から選りすぐっているのでベスト盤としても十分聴ける。しかしライブでも曲の魅力をまったく失うことなく吹いてみせるSanbornはやはり凄い。

「CHANGE OF HEART」 1987年

CHANGE OF HEART

前作ライブでキャリアに区切りをつけたSanbornの再出発宣言ともいえる超強力アルバムだ。(1)”CHICAGO SONG”粘りのあるミドルテンポのヘヴィ級リズムに乗ってSanbornも気合の入ったプレイを繰り広げるファンクな曲。サックスの音色も太く聴こえる。幻想的な(2)”IMOGENE”,アップテンポでSanbornが乗りまくる(3)”HIGH ROLLER”ハードロック顔負けの(4)”TINTIN”、タイトル通り爽やかな(7)”SUMMER”、ちょっと物悲しく切ないバラッド(8)”THE DREAM”まで、スキのない完璧なアルバム。「HIDEAWAY」と並ぶ最高傑作だ。

「CLOSE UP」 1988年

CLOSE UP

素晴らしい出来だった前作の勢いをそのまま持ち込んだような力作。”CHICAGO SONG”パート2的な(1)”SLAM”や(6)”PYLAMID”(7)”TOUGH”ではファンクなSanbornが聴ける。ボーカルナンバーにもなりそうな(2)”J.T”、爽やかなポップス(8)”SO FAR AWAY”などもある。その他の曲では比較的ゆったりめのテンポで哀愁あるメロディを歌い上げていく感じの曲が多くなっている。(9)はStylisticsで有名な”YOU ARE MAY EVERYTHING”をカバー。Sanbornにぴったりの名演になった。

「ANOTHER HAND」 1991年

ANOTHER HAND

これまでとのあまりのスタイルの違いに賛否両論が飛び交った問題作。(1)などギターの音がまるでECMのようだ。これまでのようにパワフルに飛ばすSanbornはここにはいない。ジャジーで落ち着いた曲を何かを語るように、ゆったりと吹き上げていく。当時は「Sanbornがジャズを演った!」と話題になったが、私はあまり繰り返し聴く気にはならなかった。まあ、こういったスタイルでも出来るということの証明にはなったと思うが。Sanbornを聴くなら、このアルバムは最後でいいと思う。音色はSanborn以外の何者でも無いのだが。

「UPFRONT」 1992年

UPFRONT

「WELCOME BACK SANBORN!」といいたくなるアルバム。前作は一体何だったんだ?と問い詰めたくもなるが、Funky Sanbornが戻ってきたのは嬉しかった。かつてのようなパワーを見せ付けるわけではなく、やや落ち着いた印象を与える。サウンド的にもオルガンを導入したり、とよりカラフルになっているようだ。Sanbornとオルガンは意外に合うこともわかった。(6)”HEY”はホーンセクションなどがまるでSlyだ。(7)”BANG BANG”がノリノリで楽しい演奏。(8)はオーネットの曲”RAMBLIN'”。また新たな一面を見せてくれた。

「HEARSAY」 1994年

HEARSAY

前作の続編的アルバム。やはりオルガンを導入したカラフルなファンキーナンバーが多い。中では軽快な(4)”GOT TO GIVE IT UP”や出だしがHerbie Hancockみたいな(7)”BIG FOOT”が良かった。ここまでくると、Sanborn自身が楽しくてしょうがないという感じだ。個人的には以前のスタイルがちょっと懐かしくなった。

「PEARLS」 1995年

PEARLS

またしても一気にイメージを覆すアルバム。企画ものだが、「ANOTHER HAND」を聴いた時のような妙な違和感はない。むしろストリングスをバックにSanbornがジャズスタンダードを吹き上げるというこの企画は歓迎すべきものだろう。Sanbornのブロウは肩の力が抜けた感じでリラックスしているようにきこえる。(6)”降っても晴れても”が個人的には好きだ。久し振りにSanbornのメロウなサックスが聴けたのは収穫だった。女性にはオススメ。

「SONG FROM THE NIGHT BEFORE」 1996年

SONG FROM THE NIGHT BEFORE

ジャケットがカッコイイ16作目。非常に落ち着きが感じられる作品だ。(2)”D.S.P”などはトランペットの音や曲調がMiles Davisを彷彿とさせる。(3)”RIKKI”はアコースティックギターがいい味をだす、スローナンバー。(5)”SPOOKY”では往年の音色を取り戻している(全然衰えているわけじゃないけど)。(7)はオルガンをフィーチャーした切ないスロー。傑出した曲がないのが残念だが、タイトル通り、夜に似合いそうなサウンドだ。

「INSIDE」 1999年

INSIDE

約3年振りの新作。しかもプロデューサーはMarcus Miller!ということでかなり期待大だったのだが...残念ながら裏切られた思いでいっぱいである。名コンビ復活によって80年代の超強力Sanborn再来かと思ったが甘かった。終始淡々と吹き続けるSanborn。わざと感情を押し殺しているかのよう。バックの演奏も今風の軽いアコースティックなものばかり。音色こそSanbornだが、かつてのように燃え上がるようなソロは皆無。リラックスして聴くにはいいかも。一曲だけ「これはいい!」と思ったらセルフカヴァーの"Lisa"だった...


BACK